日本に帰国せずフィリピンのスラムで暮らす「困窮邦人」たち。
すべてを捨て、最底辺で生きる彼らにとっての“幸せ”とは―?
フィリピンのスラム、路地の奥にひっそりと住む高齢の日本人男性たち。「困窮邦人」と呼ばれる彼らは、まわりのフィリピン人の助けを借りながら、僅かな日銭を稼ぎ、細々と毎日を過ごしている。警察官、暴力団員、証券会社員、トラック運転手…かつては日本で定職に就き、家族がいるのにも関わらず、何らかの理由で帰国せず、そこで人生の最後となるであろう日々を送っている。本作は、そんなフィリピンで寄る辺なく暮らす4人の老人男性の姿を追ったドキュメンタリーだ。半身が不自由になり、近隣の人々の助けを借りてリハビリする男、連れ添ったフィリピンの妻とささやかながら仲睦まじい生活を送る男、便所掃除をして軒下で居候している男、最も稼げないジープの呼び込みでフィリピンの家族を支える男…。カメラは、彼らの日常、そしてそのまわりのスラムの人々の姿を淡々と捉えていく。話しているうちに、それぞれの理由で彼らがもう日本に居場所が無いことが分かる。それなら、日本で生きていくことができない彼らが、なぜフィリピンでなら生きていけるのか? それは、日本にいる我々にとっても“幸せとは何か?”という重い問いかけを突き付ける。第3回東京ドキュメンタリー映画祭で長編部門グランプリ&観客賞をダブル受賞した本作。この機会に是非、ご高覧ください。